キャッシュと存在理由。血液循環と魂。
これまで、大企業やベンチャー企業、NPOなど様々な目的/規模の組織を見てきた。
市場の中で生きる組織において必ず論点となるのは、「我々は何のために存在しているのか?」だ。
大企業の場合、業績を上げ続け、株主/社員に還元すること。
ベンチャー企業の場合、ビジョンを実現し、世界を変えること。
NPOの場合、受益者を一人でも多く、理想の状態へと導くこと。
それぞれ答えは違うが、存在理由(=魂)とキャッシュ(=血液)の優先度を誤らないようにすることは、気を付けた方が良いと思う。
僕の在籍したベンチャー企業では、建前では存在理由を掲げるものの、実際にはキャッシュフローの改善が全ての意思決定の基準となり、嫌気がさした人から去っていった。
キャッシュフローの改善自体は必要だ。キャッシュは血液であり、循環しなければ会社は死ぬ。気を付けるべきは、キャッシュフローの改善の中で、社員の心身の健康が置き去りにされることだ。
従業員の想いや、健康的な生活よりも、カネを稼ぐことを優先した結果、従業員から仕事への熱意が失われ、心身が傷つくケースを、何度も見てきた。
こうした課題に対して、解の方向性は自明だ。痛みを伴う改革である。意思決定の基準を、キャッシュフローの改善(血液)から、存在理由(魂)へと変えるのだ。
これは勇気が必要だ。なぜなら、これまでキャッシュフローの改善に大きく貢献してきた経営層/事業部長を、現在のポジションから下ろすことになるからだ。
経営者にとっては、良心が痛むだけでなく、安定したキャッシュの創出源を捨てることになるため、非常に難しい意思決定である。