フーテンのコンサルタントの雑感

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福祉業界と保険業界の類似性 ― 最適な介護サービスの利用が難しい構造

福祉業界でのプロボノ活動を通じて、福祉サービスを利用者(要介護者)が選定するフローは、保険業界で、顧客が保険を契約するフローに近しいことがわかった。

 

福祉サービスとは、ホームヘルパーやデイサービスなど、「要介護者の日常生活を支援する、または要介護状態の進行を遅らせるためのサービス」と理解されたい。

要介護者が福祉サービスを利用するまでの一般的な流れは以下の通りである。
①認知:ケアマネージャーから福祉サービス事業所の紹介を受け、
②理解:サービス事業所の自宅からの距離や、価格、評判などを総合的に把握し、
③選定:ケアマネージャーを通じてサービス事業者と契約する。ケアマネージャーは、要介護者のケアプランに当該事業所利用を組み込む。
④利用:要介護者はサービスの利用を開始し、
⑤継続:サービスの質が良ければ、要介護状態の間、継続して利用する。

 

補足すると、ケアプランとは「要介護者が、日常生活において利用する介護サービスの計画表」である。利用可能な介護サービスは、ケアマネージャーが作成するケアプランに規定されなければならない。例えば「月曜日と水曜日の14:00-16:00は〇〇事業所のホームヘルパーが訪問する」といった具合である。要介護者は、勝手に介護サービスを変更することはできないのである。(※1)

 

このように、要介護者が福祉サービスの認知から継続利用までの全フローにおいて、ケアマネージャーは大きな権限を持つ。また、要介護者およびその家族からすると、複雑な介護サービスへの理解など当然なく、サービスの選択においてケアマネージャーに依存せざるを得ないのである。

 

やっと本題に入るが、これは生命保険の契約における決定要因の構造に近しい。生命保険は、高齢者が理解するには難解のため、顧客は生命保険のサービス内容というよりも、営業担当の人柄で保険に契約する。福祉業界においても同様で、要介護者は、介護サービスそのものの質よりも、ケアマネージャーから紹介されたから、という理由で介護サービスを選択せざるを得ない。

 

このとき問題なのは、ケアマネージャーは、介護サービスを横断的に把握するのが難しいことである。ケアマネージャーの多くは、要介護者に対して最善のサービスの組み合わせを提案したいと思っている。しかし、ケアマネージャーは数十ものケアプラン作成/管理を担当しており、最新介護サービスの情報を把握する時間はない。従って、ありものの風化した知識の中から、要介護者に介護サービスを提案せざるを得ないのである。

 

とはいえ、インターネットの普及で、要介護者/ケアマネージャーともに、介護サービスを広く知ることができる状況になっている。スマフォの普及率は高齢者間でも60%を超えている。情報の非対称性を解消しようと動く企業もある(SMSなど)。また、行政や地域包括支援センター、ケアマネージャーも課題意識を持っている。

 

要介護者が最適な介護サービスを利用できない状況は、すぐに改善するのは難しいだろうが、トライセクター(官・民・NPO)が連携しての取り組みが活性化すれば、未来は明るいと思う。

 

(※1)介護サービスは、介護保険適用範囲内で利用することで、利用料金を1割負担にすることができる。要介護度合が重くなる(1~5まで)につれ、介護保険適用範囲内の上限金額は上がっていく。要介護度1ならば167,650円まで、要介護5ならば362,170円までならば、1割負担で介護サービスを利用可能である。