フーテンのコンサルタントの雑感

ニートからフーテンのコンサルタントに進化しました。コンサルティング業界や、ソーシャルセクターのことについて投稿します。

拝啓 若手コンサルタントの皆様 ― 誰も教えてくれないキャッチアップの方法

コンサルタントは、全く未経験の新しいテーマのプロジェクトに取り組むことが多い。
良く知られているように、ソリューションとインダストリーの2軸の交点のテーマに、「わからないことがあったらなんでも聞いてね」ではなく「お前プロだろ」の精神論でくらいつかなかくてはならない

 

縦軸のソリューションは、戦略/業務/ITが大分類。さらに戦略の中でも全社戦略、新規事業戦略、M&A……といったようにもう1段階ブレイクダウンされる。

横軸のインダストリーは、その名の通り消費財、通信、車製造……といった業界区分。

 

縦軸と横軸、どちらかが経験があればさほど苦労しないのだが、若手のコンサルタントはどちらも経験がないので、何とかするのだ。

さて、ここで問題になるのは、上位職(パートナー/マネージャー)の丸投げっぷりで、「〇〇というテーマについてキャッチアップ(知識習得)しといてね」と言われて、後はプロジェクト開始まで自由裁量で学習する。これはある種洗礼的なもので、最初のプロジェクトでは大失敗して、2回目以降に自分なりの方法論を身に着けていく、という感じ。結構辛いので、以下に、プロジェクトキャッチアップの方法論を記載する。別に、コンサルタントに限らず、あらゆる「新しいコト」を始めようとする人にとって、参考になればと思う。

 

【キャッチアップ方法論】

①目的とゴールを設定する
・目的は「なぜやるのか?(WHY)」に対応し、ゴールとは「どのような状態を目指すのか?(WHAT)」に対応する。
・キャッチアップにおいても言語化して設定した方が良い。新卒ならば、例えば部署単位のBPRプロジェクトを想定すると、
・目的は「プロジェクトにおける担当タスク(議事録作成・業務ヒアリング・業務フロー作成)において、クライアント業務内容を理解したうえで、成果物を速やかに作成することを通し、プロジェクトチームとしての工数削減・成果創出に寄与する」
・ゴールは「インダストリーの観点では、〇〇業界の事業構造とクライアント企業の位置付け、カウンターパートになる△△部署の業務内容について自分で説明できる状態。ソリューションの観点では、BPRの手法(構成要素とプロセス)を理解し、成果物ドラフトの作成が可能な状態」
・大前提として、プロジェクトの背景と提案内容(提案書を読む)、自分の役割を把握しておくこと

 

②構成要素の洗い出し(初期)
・次フェーズでスケジュールを策定するためのインプットとして、以下をググって(あるいは社内の過去プロジェクト資料を見て)プロジェクトの構成要素をざっくり出す。目安2~4時間。以下例

  1. クライアント業界(メディア)
  2. クライアント企業(リクルートライフスタイル)
  3. クライアントのカウンターパートの部署(人事部)
  4. 提案するソリューション(BPR)

 

③キャッチアップのスケジュールを策定する
・目的とゴールを達成するためのタスクを分解し、いつまでに終わらせるかを検討する。WBS作成と同義。
WBSの作成におけるポイントは以下5つ。

  1. アプローチ(ハイレベルなタスクの依存関係の、時間軸での整理)をもとにつくれ
  2. タスクの所要時間見積もりで見栄をはるな
  3. タスク遂行に必要な関係者を洗い出す(依頼が必要な場合早めに処理)
  4. クリティカルパスの見極め
  5. バッファの設定(キャッチアップのような小規模タスクの場合、最短見込所要工数の20%が目安)

・この段階では情報量が少ないので、タスクの粒度は粗くて良い。スケジュールは④~⑦をこなす中で修正していく。

・スケジュールを作成することで、やるべきことの全体感が把握できる。間に合いそうにないことが判明すれば、優先度を自分でまず考え、上司に相談する。彼らはレバレッジポイント(少ない労力で大きな成果が出せる場所)を知っている

※ここまでできた段階でレビューしてもらうとなおよし。マネージャーに見てもらうのは難しければ、仲が良い先輩に見てもらおう
WBSはクライアントに見せるものではないので、見た目は適当で良い。キレイなWBSではなく、自分が、全体感が見え、進捗管理ができるものをつくれ

 

④構成要素の洗い出し(中期)
・情報を闇雲に集めるのは筋悪で、フレームワークを粗くても良いから設定し、その妥当性を検証する形で情報を集めた方が良い。
・しかし、キャッチアップ初期の段階ではフレームワークも論点も思い浮かばないので、最初はあびるように情報を集める。目安1~2日。

 

⑤仮説ベースでフレームワーク(全体感を構成する枠組み)をつくる
・④フェーズが終了すれば、全体感は見えなくても、構成要素は大部分見えてくる。
・構成要素の関係性を整理し、正しいかどうかはいったんわきにおき、フレームワークを作る(以下アウトプット例)。

  1. マクロ環境分析(PEST)
  2. 事業構造マップ(縦軸に製品、横軸にビジネスプロセス(企画~アフターサービス))
  3. 業務フロー(縦軸に部署(ヒト)/システム、横軸に業務の流れ)
  4. システム構成図(システムと、システム同士のつなり。やりとりするデータ)
  5. ステークホルダーマトリクス(縦軸に職位、横軸にサプライヤー⇒自社⇒顧客)
  6. ソリューションアプローチ(新規事業企画、BPR、システム開発などソリューションのハイレベルなタスクの依存関係と成果物を、時間軸で整理したもの)

 

⑥質問してフレームワークを精緻化する
フレームワークの妥当性を、先輩や上位職に見てもらい、修正・精緻化する
・なぜここまでフレームワークにこだわるかというと、後工程の⑦やプロジェクトのヒアリング時に登場する新規情報を、自分のフレームワークにプロットすることができるため。フレームワークの効用は、新規要素の速やかな理解である。
・より実務的なことをいうと、クライアント社員はもちろん、上司も、基本的な構造は教えてくれない。彼らにとって既知の内容(=付加価値をうまない内容)だからだ。フレームワークは自分で習得しなければ、ミーティング中に、上司とクライアント社員の言っていることが1ミリも理解できない。

 

⑦細かな部分の知識を埋めていく
フレームワークをベースにして、さらに細かな情報を集めていく
・業界の最新ニュース、業務において使用される帳票、クライアント特有の用語など

 

※もっと知りたい!人への参考文献とヒト
・戦略コンサルタントShin氏 

・事業家 山口揚平氏

・安宅氏「イシューからはじめよ」

・波頭氏「論理的思考のコアスキル」